男性の不妊因子のチェックとして一番基本となるのは精子の検査です。一般の精液検査 では、マスターベーションで精液を採取し、精液の量、精子の濃度(数)、運動率、奇形 率などをチェックします。
しかしこれだけでは複雑な精子の状態の全てを把握する事は困難です。一般精液検査では これらに加えて直進運動性と、膿精子症でないかを調べる必要があります。

昨日飲み過ぎて精子が悪くなった?

 ここでよく覚えておいていただきたいのは、精子の状態というのは日々刻々と変化する ということです。いってみれば昨日採った精子と今日採った精子には、かなりの違いがみ られる可能性も十分あるのです。よく一回の検査ですませてしまうケースもあるようです が、正確な検査結果を得るには、最低三回のチェックは必要だというのが私の見解です。
 精子が完全に成熟するまでには約三カ月かかります。したがって、精液検査も一カ月か 二カ月おいて三回以上行なうのが理想的といえるでしょう。よく、「主人は忘年会続きで 毎日飲んでますけど、精子は大丈夫でしょうか」というようなご質問をされる方がいらっ しゃいますが、精子が作られるのは何カ月か前なので、昨日、今日のことで状態が左右 されることはまずありません。
 ただし、精液採取のときの男性の体調によって、精液の排出量ひいては検査結果に変動 をきたすことはよくあることです。ですから、仕事で体が非常に疲れているときや、 睡眠不足のときは避けたほうがよいでしょう。また、検査に対する精神的ストレスが影響 をおよぼす場合もあります。こうした点を考えても、一回の検査で満足せずに、何度かチ ェックする機会を設ける慎重さは必要といえます。
 精液採取は、一時間以内によい保存状態で病院に提出できるなら、自宅でもできます。 この場合、持参するときには、精子が死んでしまわないように保温することを忘れないで ください。体温と同じくらいに保つのがベストです。


さらに高度な精子検査へ

 一般検査では問題がないといわれたにもかかわらず妊娠しない場合は、さらに精子の各 部分を詳しくチェックする必要があります。
“機能性不妊症”とは現代の医学では原因のみつからない不妊症のことをいいますが、精 子機能に問題があることも少なくありません。精子頭部の膜の正常性、尻尾の運動性、精 子のエネルギー量を中心に精子精密機能検査を行ないます。
 精液検査などといわれると、それだけでげんなりしてしまう男性陣もいらっしゃるかも しれません。いままで不妊といえば医学界においても女性中心でしたから、「男は関係な いんだ」と思っていらっしゃった方も多いはずです。そうした偏見も手伝って、不妊治療 のために男性自身がチェックをするということに尻込みする傾向は、いまだ根強く残って いることでしょう。
そのような傾向のなかで、男性不妊にもスポットが当てられるようになり、不妊治療はここ数年のうちに飛躍的な発展を遂げているのです。それによって、念願の赤ちゃんを胸にすることのできたカップルも多く存在しています。ですから、不妊治療には女性だけではなく、男性も積極的に参加することが必要不可欠なのです。
 とはいえ、かりに男性側に不妊因子が発見されたからといって、それで検査を中断して しまうのは早すぎます。並行して女性側の不妊因子も突き止めなければいけません。男性に原因が見つかったから女性は大丈夫という保証は何処にもないのです。夫婦双方の原因がダブルで生じる場合もあるからです。やはり不妊治療のスタートは、夫婦の相互理解と協力にあるのです。

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